アフターコロナの雇用収縮は「普通の女性」にとって大問題
非エリート女性が「結婚」にも「最後の職業」にも頼れない有史初めての時代が来る
■Society 5.0における働き方
メディアアーティストで筑波大学准教授の落合陽一氏は、『働き方5.0—これからの世界をつくる仲間たちへ』(小学館、2020)において、いわゆるSociety 5.0時代に人間ができる仕事のひとつとして、「人工知能のインターフェイス」を挙げている。
インターフェイス(interface)とは現代では、コンピューターと周辺機器の接続部分を示すが、もともとは異なる二つのものを仲介する「境界面」や「接触面」「接点」を意味する。
簡単な例でいくと、空港の発券機の操作の仕方がわからない利用者がいるとする。機械音声が指示してくれるのだが、人間が登場して機械の指示を利用者に伝えたり、利用者の代わりに操作する場合は、人間は発券機という機械と利用者の橋渡しとなったりする。これがインターフェイスだ。人間がコンピューターというシステムの一部となるのだ。
とはいえ、こういう職業は、コンピューター化される前の世界に生きていた人々が多い時期に求められるサービスであり、過渡期の仕事となるだろう。IT化された社会に生まれ育ち、教育機関でICT リテラシーを身につけた人々が圧倒的多数になる時代には無用とされるだろう。
さらに、落合氏は、IT化でも資本主義の「誰も持っていないリソースを独占できる者が勝つ」という原理は同じで、「誰にも真似のできない技術や表現力」を持つ人間が成功するのは変わらないことを指摘し、アメリカの社会学者リチャード・フロリダ(Richard L. Florida, 1957-)の「クリエイティブ・クラス」という造語を紹介している。「創造的専門性を持った知的労働者」は必要とされると述べている。
この「クリエイティブ・クラス」も「創造的専門性を持った知的労働者」も、普通の能力の一般大衆には関係なさそうな話である。つまり、どう考えても、普通の人間にできる仕事は消えるのではないか。
■有史始まって以来の女性の危機かチャンスか
となると、伝統的女性の生き方であった比較的高収入の男性と結婚して被扶養者になる道も狭き門となる。従来の労働市場において女性よりは有利だった男性も、ほとんどは「クリエイティブ・クラス」には属せないのだから。普通のホワイトカラーは要らないのだ。マネージメントに関するビッグデータを瞬時に分析して解を見つけるAIは、パワハラもセクハラもしないし、部下への個人的好悪もないので、人間の管理職よりいいだろう。
AI化ロボット化によって労働から人類が解放されて、余暇を楽しむことができるようになるという説があるが、賃金労働から解放されて余暇を楽しむことを可能にする生活費は、どうやって獲得するのか。放置していても資産が増えるシステムを構築している人々はいざ知らず、ほとんどの人間は自分の労働と貨幣を交換するしかない無産階級である。
この点に関しては、いくらAI化ロボット化によって生産性が上がっても、生産された商品を購入する消費者がいなくては無意味なので、消費者を生産確保するためにユニヴァーサル・ベイシック・インカム(universal basic income)制度が導入されるという説がある。いわば、国民全員に支給される生活保護給付だ。その額は、生活保護給付なのだから、生かさず殺さずの額であろう。
その財源は政府が徴収する税金でしかないが、「未来型生活保護給付金」しか収入源のない国民から徴税するのだろうか。大企業から徴税するのは無理だろう。利潤を蓄積し、蓄積したものを投資し、さらに蓄積し、さらに投資するという資本の運動からすれば、利潤増大のためのコストの削減は常に試みられ実践されてきた。だからこそ人件費コストの最小化に努め、その帰結が未来のAI化ロボット化なのだ。大企業は税金というコストの最小化にも努め、必ず節税や合法的脱税(?)の道を探す。
では、財源は政府自身が稼ぐのだろうか。「クリエイティブ・クラス」の人々が素晴らしい研究開発を成し遂げ、それが特許となり、その特許が国有化され、それらを世界中が買い、その特許料だけで国家財政が豊かになり無税国家になれる日本が予定されているのだろうか。
どうやって実現するのかわからないが、ともあれ、ユニヴァーサル・ベイシック・インカム制度が導入されるとしても、早くても15年から20年先になるであろう。ということは、この15年から20年の間を何とかしなければならないということだ。この時期に、今と近未来を生きる普通のその辺の女性を襲うに違いない雇用の収縮や消失に、彼女たちは対処しなければならない。
これは有史始まって以来の女性の危機でありチャンスかもしれない。男女平等は皮肉な形で実現されるようである。
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藤森かよこ
『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください』
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